新規顧客の獲得や継続的に取引のある顧客のつなぎ止めに注力して、休眠顧客を放置していませんか。休眠顧客を掘り起こして適切なアプローチをすれば、新規顧客の1/5のコストで成果を出せるといわれています。
本記事では顧客が休眠化しやすいBtoB営業に向けて、休眠顧客を掘り起こす具体的な方法や必要なツールを紹介します。
岩本 隆(いわもと・たかし)
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ株式会社、日本ルーセント・テクノロジー株式会社、ノキア・ジャパン株式会社、株式会社ドリームインキュベータ(DI)を経て、2012年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)特任教授。
BtoBビジネスでは商材単価の高さから複数部門が購買に関与するため、購入までの検討期間が長くなります。そのため、BtoCビジネスと比べて休眠顧客が発生しやすい傾向にあり、営業スタッフは成約までに顧客への適切なアプローチが求められます。
これまでBtoBビジネスでは、訪問営業や展示会などオフラインで新規顧客とコンタクトをとるのが一般的でした。しかしコロナ禍の影響で、近年はZoomなどを使ったオンライン商談やWeb集客に注力せざるを得ない状況に陥りました。
オンライン商談は移動時間の削減や遠方の顧客にアプローチできるメリットがあるものの、信頼関係を築きにくいというデメリットがあります。
またオウンドメディアやSNSを活用したWeb集客は、これまでデジタルマーケティングに注力していなかった企業が実践しても、すぐにリード(見込み客)を獲得できるわけではありません。
こうした背景からBtoB営業は、今こそ休眠顧客を掘り起こしてコールドリード(購入意欲が低い見込み顧客)からホットリード(購入意欲が高い見込み顧客)に育てるときだと考えられています。
休眠顧客を掘り起こすメリットは、主に2つあります。
休眠顧客の掘り起こしは、新規顧客と比べて営業コストを1/5に抑えることが可能だといわれています。
1/5という数字は「1:5の法則」に基づくもので、「新規顧客に販売するコストは、既存顧客へ販売するコストの5倍かかる」という意味です。
新規顧客から契約を獲得するには販売施策、顧客リスト作成、アポイント、商談、価格交渉など、多大な営業コストがかかります。特に1件の取引金額が高いBtoB商材は、顧客も様々な承認プロセスを経て購入するため、営業スタッフは成約までに何度も足を運ばなければなりません。
その点、既存顧客であれば商品や契約内容の説明を省略できると想定されるため、同じ商材でも新規顧客と比べて少ない営業コストですみ、利益率が高くなります。
こうした理由から、多忙な営業スタッフが限られたリソースで成果を出すためにも、休眠顧客の掘り起こしは必要な施策なのです。
休眠顧客を掘り起こすことで、サービス改善のヒントを発見できます。
「価格が高い」「サポートの対応が悪い」などの不満から、取引や商談がストップするケースも珍しくありません。
顧客の属性と休眠化した理由を探り、これらを社内にフィードバックすれば、商品・サービス改善やカスタマーサポートの品質向上などの対策がとれます。
改善策を打つことで顧客満足度や競合優位性が向上し、売上アップにつながるのです。
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休眠顧客を復活させるメリットを理解したら、掘り起こしを始めてみましょう。休眠顧客の掘り起こしは、以下の3つのステップに沿って行います。
最初にやるべきことは、アプローチする休眠顧客の分析です。
取引履歴から「過去に購入がある休眠顧客」「失注による休眠顧客」の2種類にセグメントを分類します。以下の例を参考にして、セグメントごとに離反理由を推測してみてください。
■過去に購入がある休眠顧客
過去に購入がある休眠顧客は、購入回数や商品・サービスの変更時期などから離反理由を分析できます。
▶購入回数
1)購入は1回だけ
ニーズにマッチしないため離反したと推測
2)長期間にわたり複数回購入
商品を気に入って利用を続けていたが、顧客の状況変化により離反したと推測
上記の場合、自社の商品・サービスと顧客ニーズのミスマッチが原因で離反した、また顧客に何らかの状況変化があったと推測できます。そのため、どんな理由で購入をやめてしまったのかヒアリングすることをおすすめします。
▶商品・サービス変更後
1)値上げ後の購入がない
予算の都合がつかないため離反したと推測
2)スペック変更後の購入がない
変更後の内容に不満があるため離反したと推測
現在も価格とサービス内容に変更がなければ、いずれも掘り起こしが難しいためアプローチの優先度を下げるべきでしょう。
失注による休眠顧客は、失注原因と顧客の現在の状況などから離反理由を分析できます。
1)競合他社の商品・サービスを使用
予算やスペックがニーズにマッチしないため失注したと推測
2)どこの商品・サービスも未使用
予算・スペックのニーズが全社でマッチしない、または顧客都合で失注したと推測
BtoB商材は期待する成果が得られないと、他社製品に乗り換えるケースがあります。また相見積もりをとっても予算を確保できないなどの理由で、購入を見合わせることも少なくありません。
失注原因がこれらに該当する場合は、再度アプローチをするとよい返事がもらえる可能性があるため、掘り起こしの候補に入れるべきでしょう。
このように取引履歴から離反理由を分析し、復活させたい顧客の絞り込みを行うほうが、すべての休眠顧客に満遍なくアプローチするよりも費用対効果の高い営業活動が実現できます。
復活させる休眠顧客の絞り込みが終わったら、購入を促すメッセージを考えましょう。
顧客が休眠化する理由は、「商品・サービスに対する不満」「失注」と大きく分けて2つあります。それぞれの理由別にメッセージに含める内容を紹介するので、以下の例を参考にして、訴求するメッセージを考えてみてください。
■商品・サービスに対する不満
1)料金が高い
ダウンセルや割引を提案
2)顧客の商品・サービスのわかりにくさ
おすすめの使い方やメリットを改めて説明
■失注
1)競合他社と比べて利用メリットをイメージできない
再検討の候補に挙げてもらえるよう、製品比較や最新の導入事例を提案
2)顧客都合で利用そのものを見送り
状況をヒアリングできるアンケートを送付。または直接ヒアリング
取引履歴を分析しても不満や失注原因がわからない場合もあるでしょう。そのような顧客には「ご意見やご不満をお聞かせください」という内容のメッセージを送ることをおすすめします。機会があれば、直接ヒアリングできるとなおよいでしょう。
意見や不満を収集すると顧客のニーズをキャッチできるので、商談復活のチャンスが見いだせるからです。
送るべきメッセージが決まったら、アプローチの方法を考えましょう。休眠顧客へのアプローチによく使われるチャネルに「メール」「DM」「電話」があります。
■メール
低コストで手っ取り早く始められるメリットがあるものの、休眠顧客の開封率は高くありません。開封してもらいやすい件名にしたり、本文にセミナー申し込みページや導入事例のダウンロードURLを貼ったりと、顧客の行動を起こさせる施策が必要です。
■DM
広告やパンフレットを直接手にするDMは反応率が高いメリットがあるものの、作成や送付のコストがかかります。
■電話
口頭で商品やサービスを説明したり、離反理由を探ったりできるメリットがあるものの、電話をかける時間帯や頻度によっては悪い印象を与える可能性があるので注意が必要です。
これらは単独で行うよりも、複数チャネルを組み合わせてアプローチするほうが効果が出やすい傾向にあります。
今はインターネットの発達により、BtoB商材でも顧客自身が情報収集して直接企業とコンタクトをとるケースが増えています。3つのチャネルに加えてSNSや動画なども活用し、顧客の反応率を見ながら最適なアプローチの方法を探ってみてください。
本記事で紹介した手段を使って休眠顧客の掘り起こしを行うには、SFA(営業支援システム
)やCRM(顧客関係管理システム)の活用が欠かせません。
これらは顧客の取引履歴や案件ごとの進捗状況などを一元管理できるため、離反理由の分析やアプローチ方法の選定が効率的に行えるからです。
とはいえ、SFAやCRMは数多くの製品が市場に出回っているため、「何を基準に選べばよいかわからない」という声も少なくありません。自社に最適なSFAやCRMを選定する際に重視すべきポイントを解説します。
※ICT(Information and Communication Technology)とは…「情報通信技術」のこと。「情報技術」であるIT(Information Technology)に「通信」を加え、情報を元にしたコミュニケーションという意味合いまで含める。国際的にはITよりも一般的な用語。
費用対効果を最大限に発揮するために、営業スタッフが使いやすいツールを選びましょう。
多額の費用を投資してSFAやCRMを導入しても、「日報や顧客情報の入力が面倒」という理由で現場の営業スタッフに活用されないケースがあるからです。
SFAやCRMを定着させるためにも、ラジオボタンやチェックボックスなどの選択項目が多く入力の負担が少ない製品を選ぶとよいでしょう。
近年、導入前に無料体験ができるSFAやCRMが増えています。導入の失敗を防ぐためにも、導入前に現場の営業スタッフに体験してもらうことをおすすめします。
外回りの多い営業スタッフが、外出先からスマートフォンやタブレットで入力できるかも確認すべきポイントです。
モバイル対応のSFAやCRMであれば、移動時間中に日報や顧客情報の入力ができるため、商談後に自社に戻って報告する必要がありません。
商談中に必要な情報にアクセスできるので、今まで以上に顧客とのやり取りがスムーズになります。
MA(マーケティング活動の自動化)、ERP(基幹システム)など既存ツールと柔軟に連携できるかも重視すべきポイントです。
例えばSFAとERPを連携させると、SFAに入力した受注確定情報や計上後の売上データがERPでもリアルタイムで確認できるようになります。そのおかげで経営判断の不確定要素が減るため、迅速かつ的確な経営戦略を立てられるようになるでしょう。
そのほかにも、SFAに登録された営業スタッフの目標達成率や売上実績と、ERPに保存された人事データを照らし合わせて分析すれば、適材適所の人材配置も実現します。
このようにICTツールの連携は、経営改善やシームレスな組織づくりなど様々なメリットをもたらします。SFAやCRMの導入を検討する際は、既存ツールとの連携も考慮するとよいでしょう。
日鉄日立システムエンジニアリング株式会社では、日報入力や顧客情報のメンテナンスを最小限に抑えたクラウド型SFA「LaXiTera」をご用意しています。導入前に1カ月間の無料体験が可能なので、休眠顧客の掘り起こしで売上アップを図りたい企業様はお気軽にご相談ください。
※本記事は2022/08時点の情報です。