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2022.08.30

営業の基本フレームワーク「BANT」とは? 商談の勝ちパターンを掴むコツを解説

BANTのイメージ画像

営業のヒアリング手法であるBANT。商談の受注確度を判断するために、多くの企業で活用されるものの、正しい使い方を理解している営業スタッフは多くありません。

 

本記事では、BANTを用いて商談をスムーズに進めるコツ、BANTで集めた顧客情報を最大限に活かす方法を解説します。

 

監修

岩本隆氏の画像

岩本 隆(いわもと・たかし)
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ株式会社、日本ルーセント・テクノロジー株式会社、ノキア・ジャパン株式会社、株式会社ドリームインキュベータ(DI)を経て、2012年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)特任教授。

BANTとは?営業の基本フレームワーク

BANTとは、営業が商談で顧客の要望をヒアリングする際に使う基本フレームワークで、以下の単語を略した用語です。

BANTのイメージイラストこれらを顧客からヒアリングしておくと商談の受注確度が上がるものの、1つでも欠けると成約の可能性は極めて低くなります。

ここからは、商談でBANTをヒアリングすることが、なぜ重要なのかを解説していきます。

Budget=製品・サービスの予算

Budgetとは、顧客が製品・サービスを購入する際に確保可能な予算です。

予算を確保する前に、購入を検討するための資料請求や見積もり依頼を行う企業も少なくありません。そのような企業は複数社から見積もりをとり、最終的にどこで購入するかを決めてから、予算案を固めていきます。

顧客が予算を確保していない場合は、営業スタッフの提案次第で、ある程度の概算予算をコントロールできる場合もあります。

また、概算予算が決まっている顧客に対しては、「概算予算の範囲内で提案できるか」が重要です。

Budgetが欠けたときのトラブル

自社の製品・サービスが顧客のニーズにマッチしても、予算を確保できないと商談延期、もしくは失注する恐れがあります。営業スタッフが概算予算を把握できないと、受注後に製造や開発が必要な製品・サービスであることが判明した場合、納品までの工程に多大な影響を及ぼします。概算予算は、可能な限り抑えておきましょう。

Authority=真の決裁者

Authorityとは、製品・サービスの購入を決める権限を持つ人です。決裁権を持つ人と直接交渉すると、商談がスムーズに進みます。

ただし、決裁権を持つ人が購入予定の製品・サービスに詳しいとは限りません。中堅・大手企業の決裁者は、事業部長や部長クラスの管理職であることが多く、中小企業では社長が決裁者となる場合もあります。製品・サービスの知識がある現場の責任者の提案をそのまま承認するケースも珍しくありません。このような場合、真の決裁者となるのは現場の責任者です。

そのため、迅速なクロージングを行うには、商談の早い段階で「事実上の決裁者は誰か」を把握することが重要です。

Authorityが欠けたときのトラブル

決裁権のない担当者と商談をまとめても、顧客の社内の稟議承認フローにおいて決裁権のある管理職から否認され、失注する可能性があります。

Needs=顧客ニーズ

Needsとは、製品・サービスの購入を検討する顧客のニーズです。

顧客ニーズは、本来は顧客の企業全体で考えるものですが、企業が製品・サービスを購入する際は、以下のように様々な立場の人が関与します。

・製品・サービスの購入可否を判断する役職者
・商談に出席する窓口担当者
・実際に製品・サービスを使う現場社員

営業スタッフは商談において、自社の製品・サービスは「誰のニーズ」なのかを正確に把握しなければなりません。

例えば、コールセンターで働くスタッフの稼働率を上げるために、ICTツールの導入を検討する企業があったとします。このような場合、経営層またはコールセンターの課長から情報システム部にICTツールの選定依頼があり、情報システム部は依頼内容に合うICTツールの資料請求や見積もり依頼を行います。そのため、商談に出席する窓口担当者は、情報システム部となることが一般的です。

窓口担当者である情報システム部は、役職者から簡単な説明を受けただけで、コールセンターのスタッフが抱える本質的な課題を理解しているとは限りません。そのため、顧客の抱える要望や課題が、誰のニーズであるかを詳しくヒアリングする必要があります。

※ICT(Information and Communication Technology)とは…「情報通信技術」のこと。「情報技術」であるIT(Information Technology)に「通信」を加え、情報を元にしたコミュニケーションという意味合いまで含める。国際的にはITよりも一般的な用語。

Needsが欠けたときのトラブル

決裁権のある担当者と商談が進み、予算や導入時期の条件をクリアしても、製品・サービスの利用価値を理解してもらえる提案ができず、失注に終わる恐れがあります。

Time frame=導入時期

Time frameとは、製品・サービスの導入を開始する時期です。

導入時期は受注確度を判断するうえで、重要な要素といえます。導入時期が決まっている場合は案件の優先度が高い、未定の場合は優先度が低いと判断できるからです。

導入時期が未定のまま商談を進める顧客も多く、「なるべく早く」「来期を目途に」と、曖昧な答えが返ってくるケースも少なくありません。

しかし、商談をスムーズに進めるためにも、何らかの理由で導入時期が前後することを想定しつつ、導入時期や利用時期は明確にヒアリングしておく必要があります。

Time frameが欠けたときのトラブル

導入時期の目途が立たないと、営業スタッフは製品サービスの開始までにかかる工数や承認フローといったタスク管理ができません。また、他の条件をクリアしても、導入時期が明確でないと顧客の都合で導入や利用が見合わせとなり、商談が凍結する恐れがあります。

BANTの条件をヒアリングする順番

商談でBANTをヒアリングするおすすめの順番と聞き方のコツを解説します。

ヒアリングの順番を決めて商談に臨んでも、顧客の都合で思い通りに進まない場合もあります。

その場合は、商談を通してBANTをヒアリングできれば問題ないので、臨機応変に対応しましょう。

本質的なニーズを把握

BANTで最初にヒアリングすべき項目は、本質的なニーズ(Needs)です。

BANTを商談で用いる目的は、顧客の課題に対し、最適な解決策を提案するためです。
営業スタッフの提案は「顧客が抱える課題の解決策」が基本となります。
どんなに魅力的な製品・サービスでも、顧客の課題を解決できないものであれば、
商談を進める意味がありません。BANTで最初にニーズの確認を進めるのは、そのためです。

商談で顧客に課題をヒアリングしても、頭の中で「真の課題」が整理されていないことが多く「〇〇を利用したい」と、漠然とした回答をもらうことも珍しくありません。

顧客の本質的なニーズを探るときは、顧客の現状と理想をヒアリングして、課題を確認します。顧客から現状や理想を上手に聞き出せないときは、購入を検討する背景や製品・サービスに対する要望を質問しましょう。

稟議承認フローに沿って決裁権を確認

BANTで次に確認する項目は、稟議承認フローに沿った決裁権(Authority)です。

顧客のニーズにマッチする商材でも、決裁者からの承認を得られないと、商談が流れてしまう可能性があるからです。

多くの企業では、「500万円までの決裁権は課長」「1000万円までの決裁権は部長」と、購入金額によって最終的な決裁者が異なります。成約したい顧客の稟議承認フローを押さえておくと、商談の流れがスムーズになります。

また、決裁者が稟議を通すための具体的な動きを把握しておくことも重要です。同じ部長承認でも、企業によって申請者が部長宛てにメールを送るだけか、月に1度の部長会議を待たなければ承認が下りないのかで、営業スタッフの対応が変わってくるからです。

予算を確保

BANTの予算(Budget)は、商談の後半で確認することをおすすめします。

予算が合わないと成約に至らないため、早めに知っておきたい情報ではあるものの、商談初期の段階では顧客のニーズが明確になっていないケースが多くあります。そのようなときに、成約に直結する予算の話をされると、顧客は押し売りをされているように感じるでしょう。

また、購入の検討段階では明確な予算を決めずに、商談を進める顧客も少なくありません。こうした顧客に予算を聞いても、具体的な金額は返ってきません。そのようなときは、100万円や200万円といった大まかな確保可能な予算や、過去の実績を確認するようにしましょう。

購買プロセスを把握

予算と同じタイミングで、導入時期(Time frame)を確認します。

その際に、導入に至るまでの購買プロセスを把握しておくことが重要です。一般的に企業の購買プロセスは、下記のフローで進みます。

1)比較検討のため、担当者が資料請求・見積もり依頼
2)1)で集めた情報を直属の上司に提案
3)上司から役職者(稟議決裁者)に説明し、役職者会議で承認
4)承認から3カ月後に導入

上記のフローに沿って、導入までに「誰が」「どんな動き」をするかを確認しておきましょう。

明確な導入時期が決まっていない商談では、導入時期を顧客任せにしていると、なかなか成約に至りません。そのようなときは、営業スタッフから顧客の購買プロセスに沿って、最適な導入時期を提案するとよいでしょう。

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BANTを活用するときの注意点

BANTを商談で活用するときの注意点が4つあります。

1つ目は、営業スタッフが商談で直接ヒアリングした情報からBANTを設定することです。ウェビナーや資料請求といったアンケートで集めた情報からBANTを設定する企業もありますが、これらの回答は正確性に欠けるものも多く、商談ではあまり参考になりません。

2つ目は、必要以上にBANTに頼りすぎないことです。顧客の本音と建前が異なることもあれば、顧客の社内事情で予算や導入時期を見直さなければならない可能性もあります。BANTと並行して、営業スタッフ自身や会社が過去に蓄積してきた営業ノウハウを活用しながら、柔軟な顧客対応を行うようにしましょう。

3つ目は、すべての顧客に対し、BANTが万能に活用できるとは限らないことです。BANTはトップダウン経営が主流の欧米企業で生まれたヒアリング手法です。多くの日本企業が現場から決裁者へとボトムアップで意思決定を行うため、商談で正確なBANTのヒアリングが困難な場合もあります。その場合は、BANTを活用しない方が、かえって商談がスムーズに進む可能性があります。

4つ目は、ただ単にBANTを用いて顧客の顕在的なニーズを探るだけでなく、潜在ニーズも顕在化させることです。近年、ニーズのないところに新たな市場を創るビジネスも増えています。BANTで集めた顧客の潜在ニーズを顕在化させて、新たなビジネスチャンスをつかむことも、今後の営業活動に求められてくるでしょう。

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BANTで集めた顧客情報は、どれも商談の受注確度を判断するのに重要な要素です。これらの顧客情報を正確に管理することで、成約率の向上が期待できます。それを実現するには、SFA(営業支援ツール)の導入が必要です。

SFAには、顧客や案件ごとにBANTに付随する商談の会話内容や進捗状況を一元管理できる機能が搭載されています。加えて、案件ごとの受注確度や受注予定金額の管理も容易に行えます。これらの情報は、すべてリアルタイムに反映されるため、受注確度の判断が正確かつ迅速になり、営業ノウハウの共有や現実的な営業戦略の立案が可能になるでしょう。

日鉄日立システムエンジニアリング株式会社では、営業管理職と営業スタッフが情報共有できる掲示板やコメント機能が搭載されたクラウド型SFA「LaXiTera」を用意しています。そのため、SFAに登録した商談履歴から顧客の潜在ニーズを分析し、社内で活発な議論を交わすことで、新たなニーズや市場を開拓する機会に恵まれるでしょう。

BANTで商談の勝ちパターンを掴もう

BANTは商談の受注確度を判断する重要な顧客情報なので、正しい使い方をマスターすれば、成約率の向上や現実的な営業戦略の立案が期待できます。商談の勝ちパターンが掴めずに困っている企業様は、顧客のBANTを正確に把握することから始めてみるとよいでしょう。

BANTでヒアリングした顧客情報は、SFAをはじめとするICTツールで的確に管理できてこそ真の効果を発揮します。BANTで集めた顧客情報を有効活用して、費用対効果の高い営業活動を行いたい企業様は、SFAの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

※本記事は2022/08時点の情報です。

 

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